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「この帝国は滅びます」

アリスは声高々にこう言った。

彼女は、後に偉大な皇帝となる者であったが、この頃は宮廷に仕える下女の1人にすぎなかった。

「ちょ、ちょっと!何を言ってるのアリス!そんなこと言ったら……」

顔を真っ青にしながらアリスを窘めるのはリベラ。

しかし、そんなリベラに目をくれることもなく、アリスはさらに言葉を続ける。

「北からは異民族が、南からは帝国市場を蝕む商人が、それぞれ枚挙に暇がないほど押し寄せてきております。これらに対して宥和的な姿勢を取るなどはっきり言って有り得ません。なぜ銀の流出を見過ごし、蛮族の窃盗を許すのですか、陛下。」

彼女は平民の身分であるにも関わらず非常に見識深く、その知恵は帝国お抱えの研究者に勝るとも劣らないほどであった。

だが、そんなことはアリス自身も含めて誰も知らないのであった。なんせ、下女であるアリスの言うことにまともに耳を傾ける者など、誰一人として居なかったからである。――たとえ一番の親友であるリベラであろうと。

「異民族とて同じ人間である。商人は我が帝国に優れた道具と豊富な資源を提供してくれる。彼らを招くことこそが万世平和の鍵であると考える。そなたの考え方はもう時代遅れなのだよ。」

「ですが陛下、異民族と我々は言語から違うのです。彼らは何かあればすぐに剣を抜き、怒声をあげて我々に剣を振ります。商人は狡猾です。相手を蹴落とす機会をじっと見定め、そのときが来たら毒牙で相手を殺すでしょう。陛下、宥和と協調を履き違えないでください。」

アリスは熱心に語るが、その言葉は皇帝の心には何一つ響いてはいない。

「ちょっと!アリス!陛下に逆らうなんて幽閉だけじゃ済まないよ!今からでも遅くないから謝って!!」

今度こそ親友を宥めるべく、先程より強い口調で、かつ肩を掴みながらリベラは言い放った。

しかし、アリスは一歩たりとも譲ろうとしない。

「リベラ、貴方はまたそうやって既存権益に迎合して仮面を嵌めながら生きるのですか?次に無実の罪で殺されるのは貴方の妹かもしれないのに?」

「だから革命を起こして今の陛下を迎え入れたんじゃん!!逆にアリスはなんなの!?何が不満なの!?もう飢えることも殺されることもないんだよ!?」

「国が滅びれば私達も滅びます。もう私達は、自分で火を起こすことも動物を狩ることも出来ないのです。」

「そんなこと言ったって!この国は1000年以上続いてるんだよ!?それが今滅びるなんてこと有り得ないでしょ!?」

「ですが、ユグドラシルは枯れ果て折れました。あれが帝国に起きない保証などどこにもありません。」

「だ、だからって……」

ついには何を言えば良いのか分からなくなってしまい、リベラは顔を伏せた。

仕方のないことである。同年代より抜きん出て頭の冴えるアリスに言い争いで勝つなど、このときまだ自分のやりたい事すら碌に分からなかったリベラには不可能であった。――もっとも、数年後にはこれは逆転しているのだが。

「諍いは済んだか?もう良い。そのような前時代的な考えなど聞き飽きた。下がれ。」

「陛下、これだけは言わせてください。歴史は貴方を見ています。貴方の所業は後世に残ります。貴方は未来永劫後世に裁かれるのです。そのお覚悟を。」

「……一応肝に命じておこう。もっとも、その必要はないと思うがな。」

こうして、アリスは下女を辞め、宮廷を去った。……何故かリベラも一緒に。

「リベラ、貴方まで下女を辞める必要はなかったのでは?私に着いてきたところで食べる物はありませんよ。」

「うーん……確かになんで着いてきちゃったんだろう。なんというか……一人になるぐらいならアリスの隣で死ぬ方が良い!みたいな?」

「……正直、今の言葉は気持ち悪いです。」

「な、そこは嘘でも嬉しいとか言ってよ!!アリスのバカ!!!」

「うふふ。でも、貴方が着いてきてくれたのは本当に嬉しいです。一人だとつまらないので。」

「あ〜!アリスがデレた!!!!」

「はぁ……せっかく貴方の為に不慣れな嘘をついたのに、そんな反応をされると悲しいです。」

「え!?今の嘘だったの!?!?内心めちゃくちゃ喜んだのがバカみたいじゃん!!!!」

「今のも嘘です。と言ったら?」

「今のも嘘!?!?じゃあ嘘が嘘だから本当で……いや、これも嘘かも…………もう分かんなくなっちゃったじゃん!!!」

「うふふ。やっぱり、貴方と居ると退屈しませんね。」

「あ〜!!今のは本当でしょ!!!!!」

「これからもよろしくお願いしますね。リベラ。」

「……うんっ!こっちこそよろしくね!!!アリス!!!!」